舞台や映画でよく見る役者がいる。
その役者が好きだから見る映画と、好きな題材だから見たらたまたまその役者が出ている。
今日のは後者だ。
『天上の花』をぎりぎりに見に行った。
今年は生没何年絡みなのが映画や企画展が多い。島崎藤村の『破壊』も今日の『天上の花』も映画になり、『天上の花』にも出てきた萩原朔太郎も没後80年で萩原朔太郎大全2022が開催されている。
最近群馬づいているので気になるが来年の1/10までとのこと。行ける日がない。
映画『天上の花』は、映画館で流れた映像で見たい!と思ったら東出昌大さんだった。
この人はそういうことがよくある。
見たい映画に高い確率で出ている。舞台『豊饒の海』もまさにそうだった。
今回の三好達治は、私が一方的に想像しているだけだが彼の好きな人物だと思った。三好は、二・二六事件の西田税とも交流があり、東出さんが好きな三島由紀夫もふれている。
私は、東出昌大さんのプロフィールはほとんど知らない。パンフレットで助監督がふれていた落語が好きなことも知らなかった。
映画の序盤、少し高いやさしい声で詩を詠みあげる。戦争詩をめぐる師と仰ぐ朔太郎との確執。朔太郎の妹、慶子(原作ではアイ)への一目惚れ。妻子を得ても消えない慶子への執着。三好がどれだけ愛してもそれは本当に愛なのだろうか。
やさしい声で丁寧にただ慶子を愛しているようでただ自分の手が届く範囲で囲っておきたい、自分の思う美しい慶子にやさしくしたいし、思い通りにならない止められない激情も湧く。
「貴女にもんぺは履いてほしくない」「千円をあげれば貴女はここにいてくれますか」。
慶子はわかままだと聞いていたのに、思い通りにならないとわかっていたのに、わかり合うことがない、わかり合おうとしない。
少し高めのやさしい声で、真面目そうな顔でふとした時に狂気を振りまく。
慶子がふたりが10ヶ月ほど住んだ三国の家を出る時に、三好は家の2階から慶子を見下ろし言う。「一万円あったら一緒に暮らしてくれますか?」
そのときの表情にゾッとするような狂気を見た。
明らかに一方的すぎる愛を、執着を、私はこれを愛と呼びたくない。
慶子役をした入山法子さんのインタビューもたまたま読んだ雑誌に出ていた。
東出さんがあまりに大きいのでカロリーを使い、1日何食も食べておやつも食べて臨んだらしい。
あの狂気に向き合いながら翻弄されていく姿、殴られることに慣れることがこわいと叫ぶ姿。自由な人を閉じ込めてはいけない。
あと、パンフレットがプロデューサー、監督、東出さんの直筆サイン入りだった。
初めに三好と結婚をした佐藤智恵子が三好とのお見合いで三好の詩で好きだと言った『雪』という詩がよかった。
そのよかったをやっかいだと思う三好の一面。
三好の詩はさらっと見る限りではとても深々とするモノクロの中に色がパッと入るイメージだったのだが、少しちゃんと三好のうちなる狂気の一面を見てみたいと思った。
パンフレットはとても読み応えがありそうだった。